あなたの骨、大丈夫?-兵庫県は全国トップの骨折リスク!
兵庫県の現状 ― 骨折の高リスク地域です
兵庫県では、40歳以上の大腿骨頚部骨折(太ももの付け根の骨折)の発生率が女性で全国1位、男性で全国5位と報告されています1)。
この骨折は「脆弱性骨折」と呼ばれる骨折により発生します(後述)。骨粗鬆症が進行している人に特に多い骨折です。つまり、兵庫県は骨粗鬆症が背景にある骨折リスクが全国的にも高い地域といえます。
脆弱性骨折とは
立った状態からの転倒や、それ以下の軽い衝撃で起こる骨折を脆弱性骨折と言います。骨がもろくなっていること(骨粗鬆症)が主な原因です。
さらに、脆弱性骨折の部位別内訳を見ると、60歳代前半までは前腕骨折(橈骨遠位端骨折が代表例)が多く、それ以降では大腿骨や脊椎の骨折が増える傾向が確認されています2)。
それでは、脆弱性骨折の原因となる骨粗鬆症とはどのような病気なのでしょうか。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、骨の量(骨密度)と質が低下することで骨が弱くなる病気です。特に閉経後の女性や高齢者に多くみられます。骨粗鬆症が進行しても自覚症状はほとんどなく、気づかないうちに進行していきます。
骨密度は50歳を超えると女性で顕著に低下します2)。また男女ともに70歳代で骨折の発生が急増し、80歳代が最多です。
令和7年 西宮市保健所「転倒骨折予防」リーフレットより引用
骨粗鬆症の主な原因
加齢
ホルモンバランスの変化
閉経後の女性は、骨を守る働きのあるエストロゲンが急激に減少するため、骨粗鬆症のリスクが一気に高まります。女性に骨粗鬆症が多いのはこのためです。
カルシウム・ビタミンD不足
骨の材料となるカルシウムが不足すると骨はもろくなります。さらに、ビタミンDが不足するとカルシウムが体内にうまく吸収されません。日々の食事や適度な日光浴がとても大切です。
運動不足
骨は適度な負荷がかかることで強くなります。運動不足は骨が弱くなる原因の一つであり、ウォーキングなどの軽い運動でも骨の健康に良い影響があります。
喫煙・飲酒
タバコは骨の血流を悪化させ、骨の形成を妨げます。アルコールの多量摂取も骨を弱らせる要因です。生活習慣の見直しが骨粗鬆症予防につながります。
薬剤性(ステロイドなど)
副腎皮質ステロイドなどは長期使用で骨密度が低下することが知られています。必要な薬は勝手に中止できませんが、主治医と相談しながら定期的な骨密度測定を受ける必要があります。
骨粗鬆症と脆弱性骨折 ― 見逃されやすいサインに注意
骨粗鬆症が進行すると、「脆弱性骨折」を引き起こしやすくなります。
代表的な骨折部位は
手首(橈骨遠位端骨折)
背骨(脊椎圧迫骨折)
股関節(大腿骨近位部骨折(頚部骨折を含む))
肩(上腕骨近位部骨折)
これらの骨折は、骨粗鬆症が進行しているサインです。特に背骨の骨折は見過ごされがちで、身長が縮んだり背中が丸くなったりすることで初めて気づく場合もあります。また、部位に関わらず、既存骨折があると骨折リスクは約2倍に高まる3)と言われています。
橈骨遠位端骨折は「脆弱性骨折の始まり」
橈骨遠位端骨折は中高年女性に多い骨折で、他の脆弱性骨折に先駆けて発生すると考えられています4)。前腕の骨量が局所的に減少しているだけでなく、全身的な骨粗鬆症が隠れているケースが多いことも報告されています5)。
早期の検査と治療が、次に起こり得る重大な骨折(股関節や背骨)を防ぐカギとなります。
引用文献
1) 令和7年 西宮市保健所「転倒骨折予防」リーフレット
2) 兵庫県令和6年度 医療関係者と連携した健康づくり支援事業
3) Kanis JA, et al. Bone.2004;35:375-82.
4) Kanis JA, et al. J Endo Investigation. 1999;22:583-588.
5) Mallmin H, et al. Osteoporos Int. 1994;4:357-61.
当院の取り組み
骨密度検査(DEXA法)
当院で使用する骨密度検査装置