手の症状でお困りの方へ 〜Part 4 手のしこり編〜
手のしこりは、腫瘍や炎症、外傷の後遺症など、原因が多岐にわたることが特徴です。しこり自体は、日常生活に支障をきたさない場合もあれば、放置すると機能に影響を及ぼすこともあります。しこりの大きさが変化する、痛みが強まる、動かしづらくなるなどの症状を来す場合もあります。
考えられる代表的な疾患
- ・ガングリオン
- ・デュピュイトラン拘縮
- ・グロムス腫瘍
ガングリオン

概要
ガングリオンは、関節や腱鞘(腱を覆う膜)の近くにできる、ゼリー状の液体が入った袋状の良性の腫瘤(しこり)です。一般的に手首、手の甲、指などに発生しやすいとされています。
症状
通常は痛みを伴わない場合が多いですが、しこりが徐々に大きくなることがあります。
ガングリオンが神経を圧迫すると、痛みやしびれが出ることもあります。
治療法
エコーを用いれば、おおよそガングリオンであることがわかります。穿刺によりゼリー状の液体を採取できれば診断ができます。穿刺後、しこりは小さくなりますが、再発することがあるため、繰り返しの処置が必要な場合があります。
ガングリオンが再発を繰り返す場合や、症状が強い場合には手術でガングリオンを摘出することが検討されます
デュピュイトラン拘縮

概要
デュピュイトラン拘縮(デュピュイトランこうしゅく)は、手のひらにある皮膚の下の組織(病的腱膜)が徐々に厚く硬くなり、指が曲がったまま伸ばせなくなる病気です。
特に薬指や小指が影響を受けやすく、手のひらが硬くこわばって、日常生活での手の動作に支障をきたします。
デュピュイトラン拘縮は進行性であり、時間とともに悪化することがあります。
症状
初期段階では、手のひらに小さなしこりやひきつれを感じます。時間が経つにつれ、手のひらの皮膚の下の腱膜が厚くなり、指が曲がったままになります。症状が進行すると、指が完全に伸ばせなくなり、手を広げるといった基本的な動作が難しくなります。
治療法
基本的に進行性であるため、しこりが進行することによる不具合があれば手術の適応となります。
手術となる患者さんの症状を聞くと、
「手を机についた時などに痛みを感じる」
「物を握った際に手のひらに痛みを感じる」
「洗顔時に曲がった指が鼻の穴に入ってしまう」
などがあります。
グロムス腫瘍

概要
グロムス腫瘍は、主に指先、特に爪の下(爪下)に発生することの多い良性腫瘍で、非常に特徴的な症状を持ちます。
症状
・発作的に生じる疼痛
・寒冷時に痛みが増強する
・ピンポイントの圧痛
これらの症状は、非常に小さな腫瘍であっても強く現れるのが特徴です。特に「冷えると痛む」「どこを押しても痛いのではなく、一点だけが激しく痛む」といった訴えがある場合には、グロムス腫瘍を疑います。大きさは数ミリ以下のことも多く、視覚的には目立たない場合がこともありますが、爪下に腫瘍があると、暗赤色に認識できることがあります。画像診断は超音波検査やMRIが有効ですが、腫瘍の部位をねらって観察・撮像しないと認識が難しいことがあります。
治療法
治療は外科的に摘出(手術)が基本で、局所麻酔下の日帰り手術で対応可能なケースがほとんどです。
「痛みがあるのに見た目には何もない」「誰にも理解されない痛みがある」と悩まれている方の中には、実はこのグロムス腫瘍が原因となっていることもあります。小さくても患者さんの生活の質を大きく損なうことのある病変ですので、症状に心当たりのある方はぜひ一度ご相談ください。
以上、4回に分けて代表的な疾患について解説いたしました。手は日常生活の中で頻繁に使う大切な部位であり、少しの異変が日常生活の質に大きな影響を与えます。手の症状はこれら以外にもたくさんあります。当院では、安心して治療を受けていただける様、皆さまの症状に応じた最適な治療法をご提案いたします。お悩みの際には、どうぞお気軽にご相談ください。